フラフラの民主党が、財政再建を実現できるのか

野田財務大臣は来年度予算のうち国債発行で賄(まかな)う分をなんとか今年度の44兆円を下回るようにしたいと語った。小泉政権のとき、国債発行額を30兆円以下に抑えると首相が明言し、それを守れなくなったときに民主党は厳しく追及したものである。

そのとき小泉首相は、「約束を守れなくてもたいしたことじゃない」と国会で答弁した。その答弁は決してほめられたものではないが、そのころに比べると財源のために発行される新規債はほとんど5割増となっている。

民主党は財源は無駄遣いを減らせばすぐに出てくると主張していた。今ではそれがまったくの的外れだったことが明白になっている。しかし菅首相を始め自分たちの主張が崩れていることを認めないために、来年度予算ではいよいよつじつま合わせが厳しくなっている。

危機感がない民主党
子供手当も2011年度から満額支給としていたのに、3歳未満に限って月7000円の増額。それでも財源とされる2500億円のメドは立っていない。基礎年金の国庫負担50%を維持するために必要な財源2兆5000億円のメドも立たず、将来の年金支払いの原資である年金特別会計の積立金を取り崩すという案すら出てきた。強い経済にするために絶対に必要だとしてきた法人減税も5%引き下げるという当初の案は実現が危ぶまれている。

昨年の予算は自民党の麻生政権の基本方針に則った予算だったという「言い訳」が可能だったが、今年は民主党の基本方針の下に組まれる予算だ。その意味では、今年の予算で国民に明白なメッセージを伝えられなければ、民主党という政党の“鼎の軽重”(かなえのけいちょう:権威ある人の能力を疑い、その地位から落とそうとすること)が問われることになるはずだが、民主党内にはどうもその危機感はあまりないようだ。

2010年5月に成立した英国の連立政権(保守党と自由民主党)は、財政再建を打ち出している。オズボーン財務相は、NHS(国民保険サービス)に関する支出を除いて25%の歳出カットという方針を打ち出した。消費税の増税ももちろん入っている。もともと総選挙で財政危機に対して歳出カットと増税という方針を国民を訴えて勝ったのだから、当然といえば当然だが、この大胆さには目を見張るばかりだ。もちろん英国の景気がいいわけではないから、財政支出のカットは景気に悪影響を与えるという議論もある。

財政再建に取り組まない政治家たち
ひるがえって日本を見ると、民主党政権は歳出カットはおろか増税についてもまったく及び腰になっているようだ。国家公務員の人件費を20%カットというかけ声は勇ましかったが、来年度については人事院勧告の1.5%賃下げに上積みすることすらできなかった。消費税増税を唐突に打ち出して参議院選挙で大敗したために、消費税論議はすっかり影が薄くなってしまった。

菅政権は来年春ごろまでしかもたないという観測が強まってくれば、なおさら増税や歳出カットによる財政再建という話は遠のいてしまう。菅政権がもし総辞職ということになってまた民主党の中で首相の座をたらい回しするということになったら、いよいよ民主党の支持率は下がる。そうなったらまた総選挙になる可能性もあるだけに、地方への予算分配という武器は捨てられない。

英エコノミスト誌の最新号に面白い記事が載っていた。どこの国でも、財政支出の削減と増税は「政治的自殺」というのが通り相場だが、ハーバード大学のアルベルト・アレジーナ、カリフォルニア大学バークレー校のドリアン・カローニ、ニューヨーク大学のジアンパオロ・レスの共同論文によると、過去の事例を研究すると必ずしもそうした見方は正しくないのだという。

ここでは1975年から2008年までの33年間でOECD(経済協力開発機構)加盟国から19カ国を選んで研究している。その結果、財政再建中あるいは財政再建策を取って2年以内に行われた選挙で、現政権が負けたケースは37%だった。この間に行われたすべての選挙で現政権が負けたのは40%だから、歳出カットと増税という国民に不人気の政策を取ったからといって「政治的自殺」というほどのことはない。ただ財政再建といっても歳出カットと増税では「不人気度」に大きな差があるようだ。当然、増税のほうが不人気度が高いのである。

もしこの「観察」が正しいとすれば、なぜ政治家は財政再建に取り組むことに尻込みをするのだろうか。論文の著者たちによると、政府の背後に利益団体が付いていると、支出カットがより難しくなるという。日本の民主党には労働組合という大きな利益団体がバックにいる。そういった組織が既存利益を守ろうとすれば、政権がいくら歳出カットを唱えたところで政策が打ち出せるはずもない。そして日本の累積赤字はいよいよGDP(国内総生産)の2倍に近づく。日本の国債が、ギリシャやアイルランドのような「ジャンク国債」になる日は目の前に近づいているのかもしれないのである。

編集後記
「人生やビジネスで最後に笑うためには『不敗』、勝っても負けてもいない状態を守りつつ、チャンスと見たら勝利を目指すことだ」。中国古典の研究家が『孫子』『論語』などから「不敗の哲学」を導き出す。最後に泣くような事態に陥らないためには、希望的観測を排して最悪のケースを常に想定し、致命傷を回避することが肝要だとする。

「勝ち」より「不敗」をめざしなさい

『孫子』、『論語』、諸葛孔明からP.F.ドラッカー、ジャック・ウェルチ、ローン新浪社長、本田宗一郎、羽生善治、鳥山明…に学ぶ。大混乱の時代、「ツキの上げ潮」に乗る者の戦略ルール、ここに誕生。

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